本記事は「ラルス・ジュネ(Ralls genet/Ralls janet 和名:国光)」という品種のりんごについてまとめています。以下目次です。
「ラルス・ジュネ(Ralls genet/Ralls janet 和名:国光)」の来歴
その起源は不明。由来に関していくつかの説が存在しますが、はっきりしているのは18世紀末、バージニア州アマースト郡にあった Caleb M. Ralls(1750-1823)氏の果樹園で育てられていたということです。アメリカ合衆国の政治家で、第3代大統領を務めたトマス・ジェファーソンが、モンティチェロで栽培していたりんご18品種の1つでもあり、アメリカでは19世紀初頭から1920年頃まで広く流通していました。
日本へは1871年に導入され、当時は「四九号」「晩成子」「雪の下」など、いろいろな名称で呼ばれており、1900年に全国共通の名称として「国光」(読み:こっこう)となりました。ラルス・ジュネは、青森県の基幹品種として、紅玉とともに100年間にわたって支えてきた重要な品種であり、1940年には栽培面積が全体の47.28%を占めていました。
青森県りんご研究所(地方独立行政法人青森県産業技術士センターりんご研究所)の一角には1901(明治34)年に栽植された記録のあるラルス・ジュネが、そして長野県には県内最古のりんごの木として千曲市指定天然記念物に指定されている1879年(明治12)〜明治中期植栽のラルス・ジュネがあり、現在でも実をつけています。
「ラルス・ジュネ(Ralls genet/Ralls janet 和名:国光)」の特性
見た目は円錐形。食べると、甘酸っぱく独特の風味があります。ミネラル感があり、柑橘系の酸味を感じることができます。
ジュースにすると、酸味と甘味のバランスの良さを感じられ、親しまれやすい味わいになります。
2020年に仏蘭西菓子研究所オフィス・ミカで実施した加工適正試験で作られたタルト・タタンは、『果肉がしっかりして形が残る。水分が多くでて煮詰まるのに時間がかかるタイプ』でした。
結びに
今回見つけられた一番古い文献は1808年の「ミズーリ州園芸協会の報告書」で、中で「Ralls Genet」と表記されています。
1871年9月のAmerican Pomological Societyの記録の中にDr. Howsleyによる「RAWLES’ GENET」の名前に関する考察と来歴に関する独自の説が掲載されていて、Dr. Howsleyの説では「ジェファーソン氏はフランスからジュネ氏にりんごの穂木を送って貰い、そのりんごが美味しかったので、苗を増やすためRawles氏に渡した」というような内容になっています。
(ジェファーソン文書の中で、この二人のやり取りも残っていますがりんごの話は出てきません。ジェファーソンがフランス滞在中にフランスのりんごについて書いているものもありますが、アメリカのりんごの方が美味しいと書いています)
たしかにジェファーソンは色々な植物を取り寄せて栽培していますが、栽培しているりんご品種自体は18種類と非常に限られていて、Ralls Genetも含まれているものの、お気に入りのイーティングアップルはEsopus SpitzenburgとNewtown Pippinだったとのこと。(18品種の中にはCalville Blanc d’hiverもあります)
ジェファーソンの食卓にシードルは欠かせないもので、アップルパイとミンスパイが好きだったそうですがRalls GenetやCalville Blancはどんな風に食卓へのぼったのか、興味が尽きません。
肝心のCaleb M. Ralls(1750-1823)氏がどのようにしてRallsの穂木を手に入れたかに関しては不明でした。
引き続き、情報を色々とあたってみたいと思います。
参考文献
三久保美加『TARTE TATIN タルト・タタンとりんごたち2019』(SHIMAUMA PRINT)
Mullan,William『ODD APPLES』(Hatje Cantz Verlag GmbH)
The Apples of New York – Volume 1 Spencer Ambrose Beach · 1905
参考URL
・杉山芬/杉山雍「青い森の片隅から」http://malus.my.coocan.jp/appls/kokkou/kokkou.htm
りんご研究所「ふるさと便」https://furusatobin.jp/gl/shops/cr/71.html
「ヒビノス林檎園Webショップ」https://tabiringo.base.shop/items/60821307
「中原のりんご国光原木」https://www.city.chikuma.lg.jp/material/files/group/35/city73.pdf